2016年04月30日

歌人 長月優が娘のように愛らしい件

      (休みにまとめてブログ更新するのやめような < 自分)

長月優さんという、年若い歌人さんがいらっしゃいましてですね。
SNSを通じて知り合い仲良くさせて頂いてるのですが、ホント娘のように心配だし、可愛らしい。さぞや年寄りとやり取りするのは辛かろうと思うのですが、コチラとしては風が吹けば気になるのですなw(比喩)

彼女の歌人としての実績は益々積まれてゆくだろうし、今こうして交流があるのを将来自慢にしようとTwitterでやり取りした短歌をこちらに転記します。あたくし、姑息です。
タイトルが敬称略になっているのは、アレですな。遠く及ばぬ有名人、文化人をさん付けしないのと同じ方向性。

引用枠は長月優の歌。太字は拙歌。2015年年末個人的に荒んだ心情のなか、親子っぽい歌のやり取りで癒やされました。長月優はいい歌人。
氏が将来プロとして場を移したとき、また推敲などで公開した歌を取り下げる場合はこの記事を削除します。

本棚に長月優の名はひかり取ってくれよとかくも愛しむ

画面からこぶしの花が萌えそれが長月優と気づくまで、風
 https://t.co/7ZJBM2NIEu
 ◆
 ◆
 ◆
ただいまという場所はまだあたたかくこどもに戻って叱られてみる    (長月優)


いつ知らに叱られ方を覚えしか水屋の前のすがたうつくし 

いつの間に弱く小さくなりし手に触れれば冷えて暮れてゆく年    (長月優)


二十歳とは誇らしきこと間隙に訛りの変わる寂しさまでも

ただいまと発声すればそれはもう故郷の音に戻りて響く    (長月優)


いつまでもこの子の母でありたいと日射しのなかで握るててと手
タグ:短歌
posted by きむろみ at 11:23| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

#2015ふりかえり短歌

えんどうけいこさん小川けいとさん企画・主催の2015ふりかえり短歌に参加しました。こちらも前記事同様、togetterでまとめさせていただいてます。
コチラ→ http://togetter.com/li/920215
いやあ、一年の三分の一終って、去年のふりかえり――って我ながらどうなんだろう。今年の達成感など一つもないまま春は過ぎてゆくのですねえ。

さてさて。
今年はめっぽう歌を詠む心持ちをなくしてしまってますが、その中でもあがきつつつくった歌とふりかえり短歌を交えて日々の備忘としましょうか。
*************

さみどりの基盤の内に街があり日々千つくる生業の吾

言葉豊かに生きる人らのざわめきを繰り下げて読む静かな朝に

死ぬ前の父やはらかく汗をかき人とふものの承認不要



見づや我がうちなる川を 滔々と呼べどかへらぬ歌の涯を

過ぎてしまえば美しいとはこれからの我の心にきみがないこと

平等に愛は触れつつ真直ぐな傘の中にて溺れ死すわれ

突風に剥がれた屋根の隙間から二月逃げ去り明日は卒業

あるこおる、或るとき凍る言葉あり、雨、軋みつつ雪、に変わる日

本音から云えなくなるよ言わずには居れないものを建前として

グリコから夕暮れせまる帰り道ぱいなつぷるは哀しい調べ
タグ:短歌
posted by きむろみ at 10:51| 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月29日

#2015年の自選五首を呟く

2015年、年末。塾カレーさん企画の、短歌クラスタによる自選五首ツイート。#2015年の自選五首を呟く に参加しました。今から遡ること4か月前。いつの話だよ、というツッコミはなしで^^; 下書きに入れて随分経ちました、ほどよき発酵具合になってきたでしょうか……というのは悪い冗談。
――前に進まなきゃ、です。

この企画は拙いながらわたしがtogetterまとめでまとめさせていただいてます。
コチラ → 2015年の自選五首を呟くをまとめてみた

わたしの自選五首はこんな感じ。
**********
やがて来る別れのための杉玉を飾るかのごと在る車椅子
 <1>

用意した車椅子は結局、杉玉のように茶色がかることなく、父は逝ってしまった。五月四日の歌。父の亡くなったのは師走、二十四日。今年は父についてばかり詠ってた気がする。

さむいねの「ね」の字にくるみ弟はふえた薬の袋を隠す
 <2>

第二回覆面歌会の歌。私性を切り売りする歌を私はこれからも詠うだろう。また虚構の歌が悪いとも思わない。私を切り売った歌で傷つく人が出ることよりよほどマシ。「切実な歌を詠う」テーゼは残酷だ。

川の字のどこに眠るかたしかめて 生者のほとりいまだしずかに
 <3>
nono.php.xdomain.jp/tanka1/page.ph… 

#短歌一武道会 の参加をきっかけにうたの日に参加することになって8か月。ののさんには本当にお世話になってます。※元は2012年作

「かっちゃん」と呼べばすなわち目の前にきみは死なずに生きしこの時
 <4>

人は忘れてしまう生き物だから。忘れぬようにSNS上に名を刻み画像を挙げ自らを覚まし続けている、この歌もそうなんだろう。でもそれって正しいのかな。

その昔人魚だったという祖母の水浴びにみるゆたかな乳房
 <5>

技巧云々は置いておいて祖母の立派なおっぱいを詠えたのはちょっと自慢。
**********
タグ:短歌
posted by きむろみ at 11:37| 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月21日

短詩の風2016に参加しました。

泳二さんの企画した第三回目にあたる「短詩の風 2016」に参加しました。
まとめはこちら。http://togetter.com/li/940942

昨年の2015にも参加させていただいた企画。企画主旨をきちんと把握せず参加者1ツイートのところを何度か呟いた気がします(滝汗)失礼いたしました。

花は花の根に
花を愛する人は自身のたましいに
おのおの試され問われ続ける

きみを尋ねて
ぼくはぼくを花びらのように
うつくしく重ねては問い続ける
         短詩の風 2015


あと、昨年のまとめを読み返して、いいなと思った短詩をリツイートしようとして該当するユーザーさんが消えてらっしゃったのは寂しかった。連続参加の方も勿論いらして心強かったし、昨年と比較すると作風が変化された気がする方もチラホラお見かけしました。今年の作品は一段といいものばかり。皆さんそれぞれ進化してらっしゃるんですね。

……というわけで今年は二首の短歌を風に載せました。呟くギリギリまでは三首で行こうとして迷った末での二首。このブログでは三首交えて紹介します。
なぜ一首を落としたのか、は……地元バレしそうな詠いだからw 落としたモノは2012年の作です。

川風にはためく群れのひとしきり足を生やしたカヌーが通る

合服のましろましろが渡るとき竹群匂う大工町前

今どきはエアコンのある学び舎をきみも母校として巣立つ春
タグ:短歌
posted by きむろみ at 12:53| 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月04日

閉会:題詠blog2015 五首選会

年をまたいでしまいましたが五首選会、終りました。^^;
閉会ギリギリに滑り込んだ拙ブログに温かい選と評をいただき、本当にありがとうございました。

コメント欄でお返事を返そうかとも思いましたがログが下がっていくのも切ないので記事として上げます。
12月18日しま・しましまさん
002:急
急須から注がれてくるかなしみは受け止めきれぬほどの熱さで
022:砕
高貴な食べ物のように摘まんでも蒼く砕けたじいちゃんの骨
041:扇
まろやかな酢であるらしく扇ぐ手の二つゆっくり花ちらし寿司
048:負
ぬかるみに挑んで開く我が足の実のところは負け続けてる
091:略 
「ニシキヘビ、ヤマアラシを飲み込んで死ぬ」略せられしかヤマアラシの死

選ありがとうございます。今回002の急須と041のちらし寿司は複数の選があり、とても嬉しかったです。暮らしを詠っていくなかでどうしても暗くなりがちですが002は結構「えいやっ」と零し流してしまう勢いをつけて、それを酌んでいただけたようです。041は酢の匂いの苦手な娘を相手にしながらの歌でした。

12月18日中村成志さん
025:さらさら
さらさらと粉、雪、さとう、塩釜市、生きてくときのこわれゆくもの
041:扇
まろやかな酢であるらしく扇ぐ手の二つゆっくり花ちらし寿司
049:尼
尼崎「が」の字どちらに入れるかと悩むケーキを切り分けながら
051:緯
太陽と名つく果実に刃を入れる北緯あたりは深く静かに
097:騙 
騙された怒りもて剥く烏賊二杯シンクに落ちる余熱の蒼く

選ありがとうございます、ギリギリの参加で失礼しました。
きむろみさんの歌は、地に足が着きながらも、どこか位相がずれているような不安定さも感じさせます

本人のふわふわ落ち着かないところが歌にも出ているのでしょうか。位相がずれているのを歌の個性にして、成長できればいいのですが悩ましいところです。成長したいっ。

12月19日わんこ山田さん
002:急
急須から注がれてくるかなしみは受け止めきれぬほどの熱さで
012:おろか
おろかさはピアノの蓋を開けたがり柩であると打たれて気づく
022:砕
高貴な食べ物のように摘まんでも蒼く砕けたじいちゃんの骨
034:前
百合さんが今際の際の手を前に伸べる こちらが明日なのだね
091:略 
「ニシキヘビ、ヤマアラシを飲み込んで死ぬ」略せられしかヤマアラシの死

選ありがとうございます。ここでも002を選んでいただけてる! 034は自分のお気に入りなので選んでいただいて嬉しい^^ 
しかし091が『ぞわっとこわい』で選ばれるとは。説明的でうたの日ならば村田馨さんとかに叱られそうな……いえ、なんでもありません。実はヤフーニュースのトピックスにちらりと出ていた話を歌に使っています。

12月19日五十嵐きよみさん
009:異
それぞれを異物とみなす僕らにも1たす1が2になる予感
049:尼
尼崎「が」の字どちらに入れるかと悩むケーキを切り分けながら
051:緯
太陽と名つく果実に刃を入れる北緯あたりは深く静かに
057:析
分析をすればするほどすればするほどしなくても分かりあえない
081:付 
取り取りの付箋を貼って読み終える本に極楽鳥が現る

選ありがとうございます。五十嵐さんの鋭い観察眼に敬服いたします。009と057は仰る通り、自己と他者の関係性について両極に振れる心情を詠いました。081がわかっていただけて本当に嬉しい! 時間が経ち軽くカールした付箋は鳥の羽根のようで面白いと思っていました。

12月20日東馬想さん
100:願 
「いつまでも願いかないませんよう」と流れる星は願うのでした
076:舎
一生が勉強と云う学び舎を今日は行き過ぎ野に咲くあざみ
042:特
特別な人を愛したわけでなく笑うと笑う縁を愛した
070:本
恋に恋する日を待って本棚の氷室冴子は微笑んでいる
095:申 
万有に働くと云う引力は申し分なく恋を裏切る
045:売
恋人を忘れられない胸穿ち染めた靴です、安く売ります

選ありがとうございます。100にいただいたコメント、ミスチルの「everybody goes〜秩序のない現代にドロップキック〜」を思い出しました(笑)
076は学生時代サボって学校前の河原に居たことの歌。選で迷われた045はギリシア神話を基にした短編や「赤い靴」が作歌の底にあります。恋は命がけ、血染めも一興ということで。

12月21日千原こはぎさん
002:急
急須から注がれてくるかなしみは受け止めきれぬほどの熱さで
005:中心
中心に火が通るまでよく熱し飛び立つときは不死鳥と呼ぶ
011:怪
怪しさを引き剥がしたら滲むのは孤独であろう人とバス待つ
041:扇
まろやかな酢であるらしく扇ぐ手の二つゆっくり花ちらし寿司
079:筆
電脳の恋なればこそ筆跡の代わりに愛でるフォントメイリオ

選ありがとうございます。005はつくりながら自分しかわからない歌だろうなと諦めていました。
ここでも002と041が選ばれてる、ワタシの歌、よく頑張った! 
079は恋というには変なのですが、ネットで知り合った者同士もたまには温度や肉感のあるものに触れたがるという話で。ちなみにメイリオの間の抜けた柔らかさも好きですが、長文読む時はMS Pゴシック大好きです。
タグ:五首選会
posted by きむろみ at 16:36| 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月15日

五首選会参加・自選五首(題詠blog2015)

はいほー通信の中村成志さんが企画する、≪題詠100首2015 五首選会≫に遅まきながら参加いたします。
今記事は自選五首。

003:要
それぞれに帰れる場所を持ちながら明日は要らぬと抱き合う小部屋

011:怪
怪しさを引き剥がしたら滲むのは孤独であろう人とバス待つ

034:前
百合さんが今際の際の手を前に伸べる こちらが明日なのだね

052:サイト
メモリアルサイトといえばぎこちなくあなたをよんでただ泣いてきた

091:略 
「ニシキヘビ、ヤマアラシを飲み込んで死ぬ」略せられしかヤマアラシの死



読み返すと題に寄りかかって歌が自立できてないなあと煩悶しつつ。
「関わる」という自テーマで五首拾ってみました。
タグ:五首選会
posted by きむろみ at 19:31| Comment(8) | TrackBack(0) | 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

題詠blog2015 投稿全首

題詠blog2015 きむろみ全首。
カテゴリの「題詠まとめ」でも20首ずつ・5記事にわたって読むことが出来ます。

about this blog.のマイルールを五首選会用にあらため、自選五首記事にコメント・トラックバック欄を開きました。ふつつかなブログですがよろしくご笑覧ください。
以下全首。

001:呼
呼ぶ声と手のなるほうへ入相き などか無からむ人恋うこころ

002:急
急須から注がれてくるかなしみは受け止めきれぬほどの熱さで

003:要
それぞれに帰れる場所を持ちながら明日は要らぬと抱き合う小部屋

004:栄
「もう誰も愛さない」とかよく言うよ 懐かしく観る吉田栄作

005:中心
中心に火が通るまでよく熱し飛び立つときは不死鳥と呼ぶ

006:婦
カーテンの襞むらさきの一々を覚えさせらる婦人科の椅子

007:度
度を過ごす声を発せし男子(をのこご)の口元咲ふ大地讃頌

008:ジャム
やれるだけやってみますと言いかけて震えた指が落とす緋のジャム

009:異
それぞれを異物とみなす僕らにも1たす1が2になる予感

010:玉
かごめかごめかごのなかの白玉を数えるゆびが天に羽ばたく

011:怪
怪しさを引き剥がしたら滲むのは孤独であろう人とバス待つ

012:おろか
おろかさはピアノの蓋を開けたがり柩であると打たれて気づく

013:刊
クラッチの音ひとつまで朝刊と思い抱きてともに帰れる

014:込
つぶやくと引っ掻いてくる人込みの中に紛れたいい人ごっこ

015:衛
防衛のための拳は握られて生きづらいだけペプシ飲み干す

016:荒
今ひとり消せば荒野のアドレスに消しゴムのカスなくて寂しい

017:画面
画面には雪 見てますか、隠せない隠しごとたち集まりなさい

018:救
空腹な子を救うべく歩みゆく百円よりもチキンラーメン

019:靴
イタリアの靴イタリアのかたちして履けば異国のたましいの吾

020:亜
亜美ちゃんと言われる水の戦士居てこの国のどこか平和ぼける

021:小
その声も聞かず私を追い越して角に待つ鬼、小さき吾子よ

022:砕
高貴な食べ物のように摘まんでも蒼く砕けたじいちゃんの骨

023:柱
赤く塗り帆柱のごと二本立つ。くぐれば犬か狐に出会う。

024:真
真実はいつも一つと言う人も恋は一度じゃ終わらないこと

025:さらさら
さらさらと粉、雪、さとう、塩釜市、生きてくときのこわれゆくもの

026:湿
暗湿なところに住まい腹面の伸縮で這う雌雄同体

027:ダウン
余所事や壊れものごと包み往くホンダウンソウ・カブシキガイシャ

028:改
改造を終えた心でもう一度お花見に行く 寝ない子でいる

029:尺
地図を往く尺取り虫の指たちももうすぐ羽ばたくのだね、月曜

030:物
縦書きに流れる涙 この国の物は変われど変わりえぬ事

031:認
認めても認めなくても減る口をもたない父は要介護1

032:昏
こんこんと鳴くのはきつね昏々と眠るまで聴く家鳴り渡る夜

033:逸
ただ椅子に腰掛けている人波を逸れて目だけで駅員になる

034:前
百合さんが今際の際の手を前に伸べる こちらが明日なのだね

035:液
液状のいのちに肉をつけていく膨らむまでの刹那を愛す

036:バス
「トイレではなくバスである」厳かに探す薬局洗剤の棚

037:療
やわやわと歩かぬ吾子を抱えこし療育手帳の青を踏みつく

038:読
ぎくしゃくと木目の匂いさせながら声あげて読む人まで春だ

039:せっかく
せっかくの折り目をそっと撫でながら伸ばせば人も変わるだろうか

040:清
耳削いだ古書深海の紙魚になり ことばむさぼる児島清文

041:扇
まろやかな酢であるらしく扇ぐ手の二つゆっくり花ちらし寿司

042:特
特別な人を愛したわけでなく笑うと笑う縁を愛した

043:旧
手馴らしの余裕と言はばかもしらず旧きすだまをもて扱ひけむ

044:らくだ
まえうしろ前へ後ろへ吾は揺れらくだの背平ざらざらと触る

045:売
恋人を忘れられない胸穿ち染めた靴です、安く売ります

046:貨
ゆっくりと海へ引いてく貨物船ここから陸よまた満ちてゆけ

047:四国
別府から四国い見ゆる振り向けばきっと泣くけん海だけ見ちょる

048:負
ぬかるみに挑んで開く我が足の実のところは負け続けてる

049:尼
尼崎「が」の字どちらに入れるかと悩むケーキを切り分けながら

050:答
とい答え いとよりかけし白露のたまをも落とす その脆き縁

051:緯
太陽と名つく果実に刃を入れる北緯あたりは深く静かに

052:サイト
メモリアルサイトといえばぎこちなくあなたをよんでただ泣いてきた

053:腐
凍み豆腐、夢見るまえの手放しで泣いてたきみをボクは知ってる

054:踵
深深と踵踝あたりまで日日わたくしの煮こごり溜まる

055:夫
夫とは二人と書いてつまと呼ぶ おんな大の字、おとこ太の字

056:リボン
柘榴割れ零れるような微笑みにリボンをかけた女(ひと)でありたい

057:析
分析をすればするほどすればするほどしなくても分かりあえない

058:士
先端の反対側はこけし状、木製。武士の食べもの代わり。

059:税
税込みの弔いひとつ賄えり持たざるものの燃やす哀しみ

060:孔雀
されば問う「あなたが王か」虹ふるいミャオウと重ね宣ぶ孔雀よ

061:宗
八百万神すむ家に嫁ぎ来て死なば神なる祭祀宗教

062:万年
万年の雪に染まりし鳥なれば空のあをさもひきてゆかしむ

063:丁
心根の底打つ夜半にそとくゆる きみ振り返れ沈丁の花

064:裕
「ほんたうのなまゑは裕子、やさしゐこ」つかの間父の正気もどれば

065:スロー
来る年も三十一文字のスローガンに溢れ、歌は恐ろしきもの

066:缶
空き缶に蝶を閉じ込め埋めたのち土に喰はれるまでの秘め事

067:府
めざすもの何ひとつなく蚊柱の冥府に入れる よよ泣くは誰れ

068:煌
世に謳うコピー通りの煌めきを持たない糸できみと繋がる

069:銅
やがて生む銅の碧さも握りしめ貴方に貢ぐことに決めてる

070:本
恋に恋する日を待って本棚の氷室冴子は微笑んでいる

071:粉
蘇る大地を模してあらかじめ粉末スープが仮死する嚢

072:諸
諸々の事情が積もる明日には募る心も忘れてしまう

073:会場
どん底の気分で開く会場の扉が重くもしや底なし

074:唾
革ジャンのひだり唾液に染められて父匂うとは知っていたのに

075:短
潔い花火のように短くも貴方を照らす私であろう

076:舎
一生が勉強と云う学び舎を今日は行き過ぎ野に咲くあざみ

077:等
きっとまぶたの裏にいて滲んでは乾いてるんだ僕等の愛は

078:ソース
怒りには拳のほかに味がありソースいるかね酒いらんかね

079:筆
電脳の恋なればこそ筆跡の代わりに愛でるフォントメイリオ

080:標
道標。「太く真直ぐがいいね」と両腕を見る吾も看護師も

081:付 
取り取りの付箋を貼って読み終える本に極楽鳥が現る

082:佳 
人に土ふたつで「佳い」と読み人のあゆみ始めは星に吸はれる

083:憎 
愛ってば憎々しいの含んだり、跨ってたり、したり、するよね

084:錦 
けんけんぱ、越えてゆくのは手立てでしょう錦帯橋の丸い背に乗り

085:化石 
自意識は化石のように頑なで寂しい人とブランコを漕ぐ
 
086:珠 
「烏珠闇降下紅花巫女」てふ読みものの美しき
(「ヌバタマノヤミヲオリユクベニノハナミコ」てふよみもののうつくしき)
  
087:当 
私から剥ぎ取るものに当然のごとく私が含まれること

088:炭 
燃えさしの炭で描けばどの山も太郎眠らす冬の尾根なり

089:マーク 
あざやかな若葉マークがこちら向きこと問う本のかたちしている

090:山 
合はせ着てまた分かれ行く袖だにも背縫ひの山の知らずとも越ゆ

091:略 
「ニシキヘビ、ヤマアラシを飲み込んで死ぬ」略せられしかヤマアラシの死

092:徴 
きっと死ぬ徴をひとつ得て昼の診察室を晴れ晴れと出づ

093:わざわざ 
歌うのだざわざわざわと七月の瑞穂の海が 耳たぶ光れ

094:腹 
吸って吐くただそれすらも苦しげに蛇腹楽器は「エレーン」うたう

095:申 
万有に働くと云う引力は申し分なく恋を裏切る

096:賢 
臆病を取り柄と決めて五年(いつとせ)を賢く生きるはずの迂愚なり

097:騙 
騙された怒りもて剥く烏賊二杯シンクに落ちる余熱の蒼く

098:独 
まだ知らぬ独りになれる場所があり知らぬ誰かが訪ねてたりする

099:聴 
さようなら聴こえる人に手を振れば遠くのきみに届くおはよう

100:願 
「いつまでも願いかないませんよう」と流れる星は願うのでした
タグ:五首選会
posted by きむろみ at 19:07| 企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする